こんにちは。ホームページ担当の針谷裕美です。
先日漆掻きの体験に行ってきてその時採れた漆を山中漆器産業技術センターにて濾過( ろか )するということでお邪魔してきました!
漆掻きをして採れたままの漆は濾過をして余計なゴミを取り除いて初めて作品に使用することができます。
そして濾過した漆を精製(なやし・くろめ)をすることで用途に合わせた漆を作りだします。
それではどのようにして漆の濾過・精製はされるのでしょうか?
▼漆についてはこちらのページをご覧ください。
【 蒔絵の素材 漆 】のページ
▼漆掻きについてはこちらのページをご覧ください。
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山中漆器産業技術センターで生漆作り
木屑や砂・ほこりが入っている荒味漆を濾過( ろか )したものを「 生漆( きうるし ) 」と呼びます。
山中漆器でよく行われる拭き漆技法( 木目を生かした塗り方 )はこの生漆を使っておこないます。
他にも砥の粉や地の粉と練り合わせて下地の材料として使用します。
▼こちらは漆の種類を書いた表です。この表以外にも沢山の漆の種類があります。
▼山中温泉にある漆の森で採れた荒味漆です。大きめのお茶碗の半分くらいの量です。
▼今年採れた荒味漆の量だけでは少ないので2年前に精製した生漆もまとめて桶に入れます。
▼湯熱式の攪拌器( かくはんき )に荒味漆を入れて温めながら混ぜます。
鍋の部分が2重構造になっていてそこにお湯が入っています。
▼荒味漆に棉を入れていきます。この綿に木屑などのゴミが絡みつきます。
▼大きなヘラを使って漆を混ぜていきます。
荒味漆を柔らかくし次に使う遠心分離機の負担を和らげます。
▼温まった荒味漆を桶に移します。
▼遠心分離機の中身にフィルターをセットします。
こちらのフィルターは繰り返し使うことができます。
▼ここで少しアクシデントが。遠心分離機にかけた後に出てきた漆をさらに寒冷紗( 目が粗い生地 )でこすのですが
置いてあったはずの寒冷紗が見当たらず見つかるまでに時間がかかってしまいます。
▼遠心分離機に先ほどの荒味漆を入れます。
▼遠心分離機のスイッチを入れてしばらくすると濾過された漆が出てきました!
▼作業が終わった後の遠心分離機の中です。綿に沢山ゴミがついていることがわかります。
▼寒冷紗に残った漆も絞って桶に入れます。
▼出来た生漆をチューブに詰めていきます。
▼チューブの底の部分を止めて完成です。
漆の精製「 なやし(攪拌) 」「 くろめ(脱水) 」
▼今回は使いませんでしたがこちらには山中漆器産業技術センターには「 クロメ鉢 」もあります。
クロメ鉢は漆を精製するために使う機械です。
昔は山中漆器の塗り師たちがこの機械を使って自分の使いやすい漆に精製していたそうです。
今でも自分で漆を精製する方もいますが多くは漆の販売店に漆を精製してもらいます。
漆の精製には「 なやし(攪拌) 」「 くろめ(脱水) 」といった工程があります。
「 なやし(攪拌) 」とは
クロメ鉢に生漆を入れてかき混ぜて練る作業のことを言います。
生漆の中に入っている成分を攪拌(かくはん)し細かく均一にすることで塗膜表面の凸凹を少なくし光沢が強くなります。
かき混ぜる速度やかき混ぜた時間によって漆の乾きや艶を調整します。
「 くろめ(脱水) 」とは
なやし作業に続いて行われる工程で生漆の中に含まれる30%もの水分を蒸発させることです。
くろめには日光を利用した「 天日ぐろめ 」と電気の熱で温める「 機械ぐろめ 」があります。
水分を抜いていくことで漆の粘度が増します。漆を厚く塗ることができます。
熱をかける時間によって漆の粘度を調整します。
漆は酵素が反応して硬化しますが60度以上の熱をかけるとラッカーゼ酵素がなくなり、
漆の中の水分が3%以下になるとラッカーゼ酵素の働きが弱くなり硬化しない漆になってしますので
くろめをする時は温度と時間が重要になります。
今後、なやし・くろめの工程を見る機会がありましたらこちらのブログに追記したいと思います。
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