漆掻きについて

こんにちは。ホームページ担当の針谷裕美です。
蒔絵に欠かせない「 漆(うるし) 」、いつも問屋さんから必要な分を購入して使っていますが
どのような工程を経て漆ができているのでしょうか。
ずっと気になっていた時にウルシの木から漆を採る経験をさせてもらいました。

▼漆についてはこちらのページをご覧ください。
【 蒔絵の素材 漆 】のページ

▼漆の濾過・精製についてはこちらのページをご覧ください。
【 蒔絵の素材 漆 】のページ


漆掻きとは

ウルシの木に鎌で傷をつけ漆を採ることを「 漆掻き(うるしかき) 」と呼びます。
またそれを生業にしている人を漆掻き職人と呼びます。

・ 漆掻きはウルシの樹皮の奥にある「 漆液溝 」にカンナで傷( 辺 )をつけて滲み出た漆をヘラで集めます。
漆はウルシの木の樹液です。傷がつくとそこを修復するために漆がでます。

・昔は木を殺さずに養生しながら漆を採る「 養生掻き 」で漆を集めていましたが現在は「 殺し掻き 」が主流になっています。

養生掻きのイラスト

【 養生掻き 】
ウルシの実が和ろうそくの原材料として使われるためウルシの木を枯らさず樹液を採る養生掻きを行っていました。
ウルシの木につける傷も少ないので採れる漆の量も少なくなります。
殺し掻きのイラスト
【 殺し掻き 】
現在は和ろうそくの需要が少なくなってきたためウルシの木に沢山の傷をつけて多く樹液を採取する殺し掻きが主流です。
漆を採取し終わってから「 止め掻き 」といって木を一周するように傷をつけて樹液の流れを止めて伐採します。
しばらくすると根元からひこばえ(新しい芽)が伸びてくるのでこれを育てていきます。
このように伐採した後に新しい芽が生えてくることを萌芽更新( ほうがこうしん )と呼びます。


漆掻きの講習

山中漆器組合の主催で2021年の7月7日に漆掻き職人の長平 勇先生に講師に来ていただき講習が行われました。
漆掻きの講習の様子

・ 6月〜10月にかけて漆を採取します。
10年育ったウルシの木1本から約180cc( コップ1本分 )程度の漆しか取れません。

漆掻きでウルシの木に傷をつけることを「 辺(へん) 」と呼びます。
漆は採取する時期によって呼び方や性質も変わります。
・ 初辺漆( はつへんうるし ) 水分量が多く早く硬化しやすい。
・ 盛辺漆( さかりへんうるし ) 水分量が少なくウルシオールが多い、刷毛目が出にくいが硬化までに時間がかかる。
・ 末辺漆( すえへんうるし ) 水分量が多いが初辺漆より乾きは遅い。
※地域によって採取する時期が多少異なります。辺をぬかして初漆・盛漆と呼んだりもします。
漆の初辺漆と盛辺漆と末辺漆と裏目漆について
漆掻きをした漆を総称して「 荒味漆( あらみうるし ) 」と呼びます。

・ 裏目漆は辺掻きが終わった後にウルシの木の幹から採った漆、瀬〆漆( せしめうるし )は枝から採った漆のことを呼びます。

漆掻きの辺について

・ 4日ごとに傷( 辺 )をつけます。一度に傷をつけるとウルシの木が弱ってしまうため日にちをあけます。
ウルシの木の健康状態を保ちながら多くの良質な漆を採取します。

・ 傷( 辺 )に水が入ると漆の出が悪くなるので雨の日や幹が濡れている時は漆掻きを行いません。

▼講習後に直接先生から漆掻きの仕方についてご指導いただきました。
漆掻きの講習の様子

▼漆掻きに使う道具を見ています。
漆掻きの講習の様子

▼漆掻きの道具「 タカッポ 」、採取した漆をこの小さな桶に入れます。
漆掻きの道具のタカッポ

▼漆掻きの道具、左から「 エグリ 」「 ヘラ 」「 カンナ 」「 鎌(カマ) 」です。
「 エグリ 」・・・皮が厚くなった秋のウルシの木の皮を剥ぐために鎌(カマ)の代わりに使います。
「 ヘラ 」・・・ウルシの木からでは樹液をすくい掻き取ります。
「 カンナ 」・・・皮を剥いだ後に木に傷をつけるための道具です。
「 鎌(カマ) 」・・・ウルシの木の皮を剥ぐために使います。
漆掻きの道具たち


漆掻き体験

9月5日に山中温泉の山中に漆掻き体験にでかけました。
車で近くまで行き山をくだって漆の森に入ります。

▼山中温泉にある漆の森です。
ウルシの木は他の種類の木々と一緒に育てると負けてしまうので植えてから5〜6年は下草刈りをしないといけません。
山中温泉の漆の森

▼漆掻きの前に先生にお手本を見せてもらいました。
漆掻き体験の様子

漆掻きの仕方

①②鎌(カマ)を使って傷( 辺 )をつける位置の樹皮をはいでいきます。漆に余分なゴミが入らないようにするためです。
この作業を「 鎌ずり 」と呼びます。
漆掻きの仕方鎌(カマ)

③カンナの曲がっている刃で水平に傷( 辺 )をつけます。
④先ほどの傷( 辺 )に沿ってカンナの尖っている刃( メサシ )でもう一度傷をつけます。
漆掻きの仕方カンナ

▼漆掻き用のカンナはこのような形をしています。
漆掻き用のカンナについて

▼ウルシの木の幹に水平に刃をあて溝をつけます。
漆掻き用のカンナの使い方

▼溝をつける時は角度に気をつけてください。上向きに傷をつけると溝に漆がたまらず流れてしまいます。
漆掻き用のカンナの注意点

⑤⑥漆が滲み出てくるのでヘラを使ってタカッポに漆を移します。
漆掻きの仕方ヘラとタカッポ

▼タカッポに集めた漆です。これでウルシの木2本分です。( 1日で採取した量 )
山中温泉で採れた漆

漆掻き体験を終えて漆が採れるまで長い時間と手間をかけて私たちの手元に届いていることがわかりました。
採取するまでに木を植えてから10年はかかる、しかも植えっぱなしでは育たない、
管理をしていかないといけない、そこまでしてやっと1本の木から約180ccの漆が採れる。
この貴重な漆のおかげで素晴らしい蒔絵作品が作れるということ、改めて漆を大切に扱おうと思いました。

▼最後に上を見たらウルシの木に沢山の実がなっていました。これが和ろうそくの原料になるのですね。
ウルシの実

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